第5章 太陽みたいな人
思い通りに動かない脚を見て桜は焦る。
(いっその事、寝た振りしちゃう…?)
(ううん、昔から嘘とか演技とか通じた試しがないもの…)
(匍匐前進ならできるかな…だめだ動かないぃ…)
あれこれぐるぐる考えていたが急にハッとした。
(静かになった…?今どうなってるの…?)
急いでよく聞こえる耳を澄ます。
(あれ…?尻尾に気が付いたはずなのに杏寿郎さんの音がしない…。)
すると、曲がり角の近くで、ずびっと千寿郎の鼻をすする音がした。
余裕を取り戻したからか脚に感覚が戻ってくる。
ぐっと力を込めて体を起こすと、千寿郎の様子を確認するためひょこっと角から顔を出した。
「…っ!!!!!!!!!」
―――どたんっ
後ろに飛び退きながら、人語を発しそうになって慌てて手の甲を口に当てる。
―――覗いた先には杏寿郎の笑顔があったのだ。
それも杏寿郎がしゃがみこんでいた為目線は同じ高さ、さらに鼻と鼻がくっつくかと思うほどギリギリのところに座っていた。
(こ、この人の気配感じなかった…!それにもはやホラーに近いものを感じる…!)