第5章 太陽みたいな人
杏「よもや!驚かせてしまったか!!」
(さ、さっきからずっと笑顔だけど、どこ見てるのか分からないよ…)
固まりながら杏寿郎を見ていると、ずびっと鼻をすする音がした。
音の方を見ると千寿郎が半泣きで杏寿郎の腰にしがみついている。
(止めようとしたけど力及ばず…って感じだったのかな…?)
それを見たら気が抜けて思わず笑ってしまった。
杏「ねこ神様!!驚かせてしまい申し訳ない!!!」
元気良く言う杏寿郎に桜はまたビクッとした。
杏寿郎はそれを見て目を少し見開いたあと、今度は柔らかい表情を作り静かな声で続けた。
杏「弟に止められたのだがこのような所にいらっしゃるのも放っておけなかった。」
杏「ここは日も当たらない、床も固いだろう。神は風邪など引かぬと思うが、日の当たる場所か、せめて畳の上で体を休めてくれまいか。」
そう言いながら眉尻を下げて微笑んだ。
(あ…千寿郎くんと同じ眉毛だ…。それに…優しい声と表情……。)
桜はぽーっと杏寿郎を見つめながらゆっくり頷いた。