第5章 太陽みたいな人
頭隠して尾隠さず。
桜は曲がり角に身を縮めながら隠れていたが、フサフサとした立派な尻尾を丸出しにしていた。
更にゆらゆらと不安そうに揺らしている。
―――それはそれはとても目立っていた。
杏「先程のねこ神様の尾であろうか…?しかしあのような所で何を…。」
その言葉を聞いて桜は急いで振り返った。
(あ!うそ!私のばか…っ)
自分で情けなくなりながら慌ててしゅるっと尻尾を体に巻きつけて隠した。
杏「む? 」
そう言って首を傾げながら杏寿郎は桜に近付こうと歩き出す。
千「あ、兄上!待ってください!」
千寿郎は杏寿郎の袖を慌てて掴む。
千「まだお休みになってて下さい!昼前ですよ!」
必死に言う千寿郎に兄はまた首を傾げる。
杏(千寿郎は確かに人一倍思いやる心を持った優しい子だが…、この必死さは不自然だ。)
そう思いつつも弟の意思に応えて留まってくれる。
しかしまた心配そうに廊下に目を向けて眉を寄せたのだった。
肝心の桜はその場から逃げようとするも、意表を突かれた為か脚がふるふると震えて力が入らないでいた。