第5章 太陽みたいな人
桜の身体が小さく震えていることに気が付いて千寿郎は開きかけていた口を閉じた。
そして、慌ててまたしゃがみ桜の背中をさすろうと手を伸ばした時だった。
―――カタッ
小さな物音が響く。
桜は思わず体をこわばらせると
―――ぽんっ
軽い音を立ててまた白猫に戻った。
二人はおそるおそる音がした方へ視線を向ける。
すると廊下を少し進んだ先の襖が開いた。
そこは先程の杏寿郎と名乗った青年の部屋だった。
千「あ、兄上!」
千寿郎は桜をちらっと心配そうに見てから杏寿郎に向かって走っていった。
桜は急いで廊下の曲がり角まで走り身を隠した。
―――客間に逃げ込めばよかったのに…。
桜はドジだ。
それはこの姿になっても変わらなかった。
杏「……………。」
駆け寄る千寿郎の頭を無言で撫でながらも杏寿郎の視線は廊下の先にあった。
杏「千寿郎…あの白いふわふわとしたものは何だろうか。」
千「…え?」
千寿郎も振り返り確認する。