第24章 不思議な縁と晩酌
杏「これは良い習慣だな!桜の家の教えか?」
それを聞いて桜が答えるより前に槇寿郎が口を開く。
槇「お前、前の家は無くとも当然先祖がこの時代にいるだろう。どんな家なんだ。」
その質問はただの軽い興味からくるものだった。
桜は思い出すように少し視線を上に向ける。
「家は京からこちらに来て以降ずっと大宮八幡神社の近くで、家紋は下がり藤です。他に特徴があるとしたら…先祖が川の大氾濫に尽力した事で天皇様から『勇』という字を頂いた事ですね。その字を何故か『みち』と読むんです。一ノ瀬家の長男はこの字を入れた名前を付けられます。」
そこまで言うと桜は眉尻を下げて微笑む。
「ですが、父がいつも名前を一発で読まれなくて不便だったと言って、その決まりを途絶えさせてしまいました。」
それを聞いて槇寿郎は箸を取り落とした。
槇「一ノ瀬の姓で勇をみちと読む家など限られる。あそこは………いや、それに家紋はただの下がり藤ではない。 "藤の花の家紋" のはずだ。」
驚いた杏寿郎と千寿郎とは対象的に桜はただ首を傾げる。