第24章 不思議な縁と晩酌
杏「何があったかは分からないが、父上が食事を共にしてくれるとは嬉しいな、千寿郎!!」
杏寿郎の言葉に槇寿郎と桜は肩を揺らし、おそるおそる千寿郎を見た。
千寿郎は話を振られ、更に皆が自身を見ていることに酷く動揺する。
千「あ、あの………嬉しいと言いますか……その……、」
そう言い淀む姿に槇寿郎は苦い顔をして目を逸らした。
千「………父上が僕のご飯を食べてくれている姿を見るのは初めてなので…なんだか…………、」
千寿郎は言いながら頬を染め俯く。
千「…嬉しさの他にも戸惑いとか、こそばゆいとか、たくさん混ざってしまってて……。」
その言葉を聞くと槇寿郎は顔を背けたまま目を見開いた。
桜はほっとしたように胸を撫で下ろす。
(やっぱり千寿郎くんはとっても良い子だな…。)
「……だそうですよ?お義父さん。」
桜が少し悪戯っぽい声を出すと槇寿郎は眉を顰めて振り返った。
だが、柔らかい瞳の色を見れば眉の険しさは素直な気持ちを隠す為のものだという事は丸分かりであった。
槇寿郎は自身の顔を見るとますます嬉しそうになった桜から目を逸らすと、もくもくと箸を進める。
「ツンデレさん。」
桜がまたぼそっと言うと、槇寿郎はピクッと反応して箸を止めた。