第24章 不思議な縁と晩酌
桜はフォローを忘れ、その赤い顔の可愛さに口元を押さえてふるふると体を震わせる。
杏「食べ物に対して言うのならおかしくはないでしょう!!」
笑みを絶やさず杏寿郎が助けると、千寿郎はほっとしたように息をついて視線を上げた。
すると震えながら笑みを浮かべていた桜と目が合う。
千「……………。」
「………………。」
桜は目の据わった千寿郎の顔から赤みが消えていくのを見て冷や汗を流した。
そしてすぐに逃げるように膳へ視線を落とす。
「………本当に美味しそうですね。」
膳には、根野菜や椎茸、春菊の入った冬の炊き込みご飯に、立派な鯛の塩焼き、季節の天ぷら、小さく切られた蓮根のきんぴらとひじきの煮物が入っている二つの小鉢、そしてこれまた立派な松茸のお吸い物が並んでいた。
桜は千寿郎の事を忘れて嬉しそうに舞茸の天ぷらを頬張る。
千寿郎はみるみる蕩けた表情になる桜を見て毒気を抜かれたように息をついた。
そしてすぐに柔らかい表情になって自身も箸を進める。
槇寿郎は食べながらそんなやり取りを見ていた。
槇(傍から見ればやはり桜はずるいな。あれを素でやっているあたり、質が悪い。)