第4章 協力者
それを聞いた千寿郎の肩がピクッと揺れる。
戦う人達は皆同じ服を着ていた。
その服の背には「滅」という字が必ず書かれている。
―――そしてその人たちが戦う化物…
「なにこの化物…人を…食べて……る…?」
冷や汗が頬を伝う。
その呟きを聞いた千寿郎は心配と驚きの入り混じった目をしたまま、桜の手を強く握った。
千「…今…何か見たのですか…。」
動揺ぶりを見れば、千寿郎がその光景に心当たりがあるのは明らかだった。
「う、ん…。千寿郎くんは…知ってるの…?その…人を食べる……この………、」
(……これはきっと、さっき千寿郎くんが言っていた…、)
千「……人を食べる化物なら…それは鬼です。」
千寿郎は瞳を揺らしながら答えた。
桜は目を大きくさせて、重ねられた千寿郎の手にもう片方の震える手を重ねる。
「鬼……これが………。」
桜は動揺しながら小さく呟いた。
(ユキ………心残りってこれの事……?)
そう問いながら、桜は殺され食べられる人達を思い返して顔を青くするとバッと俯いてしまう。
「こんな事って…あんな…あんな化物………。」
千寿郎はその震える声を聞いて桜の心が折れてしまったのだと悟った。だが…、
「……許せるはずない………。」
それを聞いて千寿郎は目を大きく見開いた。
(………ユキ、すごく悲しかったよね。辛かったよね。…ユキは人の事が大好きだったから…。)
そう思いながら桜はまだ心に強く残る悲しみを抑えようと ぐっと目を閉じる。
(大丈夫。私が救うよ。あんな怖い化物と戦ってくれる人達があんな酷い死に方するなんて…耐えられない。)
そう決意して、次に目を開けた時には桜の頭の中から血濡れた弟の記憶は抜かれていた。