第1章 神様が望んだ関係
ユ(大神さまからの罰が当たったのだろう。)
ユキと呼ばれるかつての "癒猫様" はぼんやりと桜の笑顔を見つめながらそう思った。
"大神さま" がどんな方なのかも分からない。
ただ、感じた大きな存在を白猫はそう呼んでいた。
やり過ぎた治療を繰り返したある日、とうとう神社に悪いことが起こったのだ。
雷が落ち、神殿は燃え、消火にあたった人達も崩れる屋根に巻き込まれた。
白猫はもちろん助けようとした。
だが―――…その時だけは癒せなかった。
人々は訳があるはずだと白猫を責めなかったが、白猫は自身を許せなかった。
数え切れないほど人を撫でてきたが、人々の中に白猫の姿を見れた者はいない。当然会話をできた者もいない。
謝りたくても謝れなかった。
耳をすませば遺族や仲間を亡くした者の泣く声が聞こえる。
それは自身が傷付けられるよりも辛く、人を愛した白猫にとっては一番の罰だった。