第1章 神様が望んだ関係
白猫はそんな桜の表情を横目で確認し、悲しそうに目を伏せた。
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かつて、この場所には立派な神社が建っていた。
たくさんの人が訪れた。
白猫は昔、病気や怪我を治すことを得意とする、いわゆる神様だったのだ。
決して有名でも大きな神でもなかったが、 "癒猫様(ゆねこさま)" と親しまれたその神様は人々を精一杯愛した。
目を怪我すれば目を、肺が悪ければ胸を、更には失った脚までも白猫が慈しみ撫でれば元に戻った。
それは簡単に言えばやりすぎというもので、神様でも超えてはいけない一線を超えていた。
人々が強欲になったわけではない。
むしろ熱心に白猫を信仰してくれた。
そして白猫が人々を愛さなくなったわけでもない。
それなのにこの関係は終わりを迎えることになる。