第1章 神様が望んだ関係
さらに、人々は白猫を責めない代わりに参拝にはほとんど来なくなった。
様子を見に行き怪我や病気の者を撫でてみたが、信仰してくれなければ治すことができない。
だから、治させてくれる対象は特別だった。
桜の一族は百年以上も経つというのに、白猫を忘れないでいてくれた特別な存在であった。
しかし今の信仰者は桜一人。
共に参拝していた桜の祖母も、もう他界してしまった。
『私は桜が大事なんだよ。』
白猫は目を細め、愛おしそうに桜を見つめた。
『だからもう、ここへ来るのはお止め。』
桜は何故そんなことを言うのか分からず、悲しそうに目の前の紅い瞳を見つめる。
「私もユキさまが大事です。…だから消えないでください……。」
出てきたのは不安そうな声だった。
―――信仰が途絶えれば神様は消えてしまう。
桜の祖母は昔、悲しそうな顔でそう教えてくれた。