第23章 ※愛し方
「え!あの!一人で歩けますので、用ならここで言ってもらえれば、」
杏「それ以上拒絶してくれるな。」
杏寿郎が急にピリッとした低い声を出したので 驚いた桜は杏寿郎の胸を突っぱねていた手を引き、代わりにパシッと自身の口を押さえ目も閉じた。
その様子を杏寿郎はじっと真っ直ぐ見下ろしながら客間の襖を開ける。
―――タンッ
襖が閉まる音を最後に、しんっと音が無くなった。
それでも桜は杏寿郎が何を考えているのか分からなかった為 まだ目を開けられないでいた。
杏「桜。」
静かな声と共に、頬に熱い手のひらの感触が下りてくる。
おそるおそる目を開けると杏寿郎はまだ笑っていなかった。
「…っ!!」
ただでさえ再び部屋に二人きりになってしまって余裕を失くしていた桜は杏寿郎にまだ笑みがない事に動揺して肩を震わせる。
その反応がまるで怯えたように見え、また杏寿郎は眉を寄せた。
杏「何故そのように怯える。」
そう静かに言いながら杏寿郎は桜を畳の上にそっと下ろす。
桜は畳に立つと今の状況について整理しようとして考えるように俯いた。