第3章 新しい世界
「わあ………。」
(とても広いお屋敷だとは思っていたけれど、案内された客間も広くて綺麗……)
千「何もない部屋ですが、よろしければご自由にお使いになって下さい。」
千寿郎はそう言って微笑んだ。
―――ふわっ
空気を揺らして人の姿に戻る。
「うん!ありがとう。」
桜はふと目の前の子の両親のことが気になった。
不自然なくらい現れない。
(二人家族なのかな…。でも……、)
(今はとても訊けないや…)
そういう事は大抵繊細なものだ。
千「…桜さまは人の姿に戻られる時、花のような香りがしますね。白檀のような…。」
「白檀…私が一番好きな練り香水の香りだ…。」
桜は付けたっけ…と首を傾げながら視線を落とした。
すると、目に入る振り袖。