第3章 新しい世界
千「桜さま…。」
兄を見送ったあと千寿郎が口を開く。
千「さっきのは一体…?」
千寿郎が眉尻を下げて桜を見つめた。
「あ、あの………」
覚えがないのに怖がられるなど杏寿郎が可哀想だ。
それに千寿郎にとっては兄。
伝えられず言い淀んだ。
千「…桜さま!」
見上げると千寿郎は眉尻を下げて困ったような笑顔を浮かべていた。
そしてしゃがむと桜に目線を合わせる。
千「言いづらい事をお訊きして申し訳ありません。出会ったばかりですし…もし言えるようになったら、その時お聞きしますね。」
その顔があまりにも優しくて、まだ幼いのに何故こんなにしっかりしているんだろう、と考えたら体が動いてしまっていた。
慰めるように鼻先で千寿郎の頬を優しく撫でる。
(あ…これユキが私によくしてくれた…)