第22章 祝福
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千「…………?」
千寿郎は目を擦りながら体を起こすと、朝の静けさに違和感を覚えて固まった。
だがすぐにバッと勢い良く布団から出て杏寿郎の部屋へ急ぐ。
千(確かに昨夜はお帰りが遅かったけど、今までもっと遅い事もあった…!朝に帰った訳でもないのに、兄上が朝の鍛錬をしないなんて……!!)
杏寿郎の部屋の前に着くとサッと急いで正座になる。
千「兄上!おはようございます!…た、体調を崩されたのでしょうか…?」
眉をハの字にさせて問いかけるも返ってくるのは沈黙のみ。
千寿郎はいつも一声で起きてくる兄を知っていた為 只事ではないと目を大きく開いた。
千「あ、兄上!?……すみません、失礼します!」
スッと襖を開くと千寿郎は口を薄く開いて固まった。
敷かれた布団はそのままで部屋の主はどこにも見当たらない。
そして部屋の雰囲気はただ一時厠へ行ったとは思えない程に冷たい。
千「…どちらへ………?」
千(昨夜、僕が寝た後に新しい任務が…?)
しかし部屋には羽織りがあり、更には普段寝る時も肌身離さない日輪刀までもがある。
千(それに必ず書き置きを残すはずなのに、それもない…。)
千(兄上が刀を置いて外へ行くとは思えない…ここじゃないのなら…いや、でも………まさか…………っ)