第22章 祝福
千寿郎は冷や汗をたらしながら客間へ向かった。
杏寿郎が桜に人として接している様子を千寿郎は昨日、目の当たりにした。
その時 杏寿郎の想いも知った。
千(…いや、どんな慕っていようとも関係ない。もし夜に部屋へ行ったのなら一緒のお布団に入ったのかもしれない…!)
千(それは絶対にいけないという決まりがある事くらい僕だって知ってる!僕が…注意しないと…!)
千寿郎は客間の前に正座すると、パッと顔を上げ 震える声を出した。
千「桜さん…!お、起きていらっしゃいますか…?」
そう声を掛けるとすぐに布が擦れる音がする。
「……千寿郎…くん…?」
明らかに眠そうな ふわふわとした声だったが、千寿郎は起きてくれた事にホッとして体の力が少し抜けたのを感じた。
千「あの………兄上は……そちらに…?」
――――――
その言葉を聞いて桜は閉じていた目をパッと開けた。
全身に感じるのは桜を守るように包む、熱いくらいの体温。
見上げれば整った男らしい顔をした恋人がすやすやと寝ていた。
―――そして、襖の向こうには弟のように可愛がっている千寿郎がいる。
(……………これは、相当まずい状況なのでは……。)
『杏寿郎さん…!起きて…!!一緒に説明してください…!!』
小声で説得しながら杏寿郎の胸に手を当ててゆさゆさと揺さぶるも、全く起きてくれそうにない。
千「桜さん……?」
返事をしない桜に、千寿郎は眉尻を下げてもう一度声を掛けた。