第19章 特異体質と未来への期待
その様子を桜は目を大きくして見ていた。
そして、千寿郎の気持ちを考えていなかった事に気が付く。
「……うん。ごめんなさい。ありがとう…。」
客間を出る千寿郎を見送ったあと、桜は素直に布団へ入った。
(そういえば、このお布団使うの初めてだな…。なんだか…少し寒く感じる……。)
そう思うと桜は猫のように丸まって目を閉じた。
――――――
そして桜がすっかり寝付いた頃、杏寿郎は静かに自宅の戸を開いた。
千「兄上……!」
千寿郎は血濡れた杏寿郎の隊服を見て息を呑んだ。
しかし杏寿郎はいつも通り太陽のように笑って千寿郎の頭を撫でる。
杏「心配するな!俺の血ではない!」
そう言うと肩の力を抜いた千寿郎に促されるまま風呂へ向かった。
杏(さすがに桜は寝てしまったか…客間で……。)
杏寿郎はそう思いながら勢い良く頭から湯を被った。
そしてさっぱりした後 水を飲んでから自室へ戻る。
千寿郎も部屋に戻り、自室には当然 自分以外の気配はない。
杏(静かだな。)
今までは、任務後のこの静けさを気にした事などなかった。
杏寿郎は照明を落すと布団に入らず布団の上に座る。
『夜這いでもすればいいんじゃねーの』