第18章 同僚への相談
それを聞くときょとんとした顔で杏寿郎は首を傾げる。
杏「その処理なら必要としていない。最近は桜と十分に発散しているからな。」
正確には "鍛錬をして発散しているうちに収まるから必要としていない" であったが、杏寿郎の返事を聞いた天元はまたげんなりとした。
天「いや、振られてんなら女を巻き込まずに一人でしろよ。お前が異常に無知なのは知ってたけど、めんどくせーことにそういうのには地味な順序が……、」
天元はそこまで言うと、急に面倒臭くなって大きく溜息をつく。
天「……まあ、いいわ。で、お前、相手の気持ちが追いついてないうちに無理矢理手を出したんだな?」
そう言いながら、夜這いを勧めた自分を棚に上げて杏寿郎を見下ろす。
杏「無理矢理……、」
そう言いながら杏寿郎は昨夜、抵抗する桜に口付けしたことを思い出した。
杏「…確かにとても抵抗されたが、必要だと感じた。しかし…、桜の反応は本当に愛らしかったな……。」
そう愛おしそうに微笑む杏寿郎を見て天元は酷く引いた。
天「俺は本気で嫌がられたら萎えるわ。まー、その感じだと惚れさせるのは諦めた方が良いと思うぜ。」
完全に興味を失った天元はとんとんとその場で跳ねながら首と手首をコキコキと鳴らす。
天「…じゃ、その桜ちゃんに会えるの楽しみにしてるわ。女に興味を持たなかったお前が惚れたんだ、ど派手に良い女なんだろ。四人目を考えるのも良いかも知れねぇしな。」
そう言って意地悪い笑顔を浮かべると天元は姿を消した。
杏「四人目…嫁の事か。」
杏寿郎は何も情報を得られず、それどころか『諦めろ、嫁に考える』と言われ、さすがに顔を顰めた。
杏「……帰ろう。」
そう呟くと杏寿郎は気持ちを切り替えるようにダッと走り出したのだった。