第18章 同僚への相談
その後、気分を変える為に顔を洗い直した桜は鍛錬をしに門の外へと向かった。
(雑念を振り払って走るぞ…!!)
走っては呼吸、走っては呼吸、朝から二回繰り返した頃 千寿郎が昼餉の支度ができた事を伝えに来た。
杏「む?桜、歩きながら食べるのは行儀が悪いぞ!」
屋敷へ上がるところで鉢合わせした杏寿郎は、桜が口をもぐもぐ動かしているのを見て眉尻を下げた。
千「あ、僕が無理矢理桜さんのお口に入れたんです!そうしないと呼吸の鍛錬をやめてくれないので…。」
桜はうんうんと頷き、里芋の煮物をごくんと飲み込む。
杏「そうだったのか!すまない!」
杏寿郎はそう言いながら、労うように桜の頭をぽんぽんと撫でた。
「いえ!杏寿郎さんもお疲れさまです!」
桜は、明るく返すとハッとして固まった。
杏寿郎の口の端っこに煮汁が少し付いている。
(杏寿郎さんも千寿郎くんにお芋放り込まれたんだ…でも気が付いてない…杏寿郎さんに比べたら私はまだまだ集中が足りないな……。)
そんな千寿郎泣かせな事を思いながら桜は脚を拭いた。
――――――
お昼を食べ終わり、また鍛錬に戻ろうとした時、桜は羽音を聞いた。
音の方へ様子を窺いに行くと、杏寿郎の腕に鎹烏が止まっている。
杏寿郎は鴉の言葉を聞くとピリッとした空気を出した。
(あ…今夜も任務なんだ……。)
そう思うと桜は俯く。
そして任務へついて行けない自分に喝を入れると、また門の外へ走って行った。
杏寿郎はその後、少しの間 鍛錬を続けたが、パッと切り上げると仮眠を取りに屋敷へ戻ろうとした。
その途中で庭の端…塀のすぐ近くで 綺麗に座りながら呼吸に集中している桜を見つけ、立ち止まる。
杏(焦りすぎだとは思うが、あの体はあの鍛錬に耐えられている。今の頑張りが生死を分けるだろう。)
杏寿郎は桜を見る目を細めた。
杏(後先の心配なく無理を出来るのも鍛錬のうちだけだ。黙って見守ろう。)
そう思うとパッと体の向きを変え、杏寿郎は屋敷へと入っていった。