第17章 覚悟と誠意、新しい関係
一番太くて長い廊下から台所はそのまま繋がっていて、遠くからでも誰がいるのかが分かるようになっている。
杏寿郎は、歳差のある千寿郎に桜を取られるとは思っていない。
だが、桜より千寿郎の方が背が高い事に気が付き無意識に邪魔をしてしまったのだ。
杏(むぅ。兄として、男として…いや、人として、今の行動には問題があるな。)
杏寿郎はそう思いながら、慌てて水を用意する千寿郎に眉尻を下げた。
杏「驚かせてすまなかった!情けない事に千寿郎に嫉妬してしまったようだ!…だが桜、千寿郎以外には易々と抱きつかないでくれ。」
そう言うと杏寿郎は貰った水をぐいっと飲み干し、千寿郎の頭を優しく撫でてから出て行った。
その様子を見て千寿郎は首を傾げた。
そして空気を揺らして人の姿に戻った桜に質問をしようと振り返る。
だが、そこで千寿郎は固まってしまった。
桜が赤くなっていたからだ。
千「…………え?そういえば抱きつくって…兄上は桜さんの人の姿をさっき見たのでしょうか…。それに…まるで人の姿を知っていたかのような……。」
そしてこの赤面する桜。
千寿郎が事態を把握するのに時間はかからなかった。
千「え、でもどうして…今みたいにユキさんが許さないはず……まさか、また一緒に寝て………?」
桜は弟のように可愛がっていた千寿郎にそこまで勘づかれ、顔をバッと隠してしゃがみこんだ。
(杏寿郎さん真っ直ぐにも程があるよ!嫉妬したなんて…言わなくていいのに…!)
こんな時に肝心のユキは体を貸してくれない。
(わざとなの…? 昨日言う事聞かなかったから?そんな…酷いよー…。人の顔だと表情丸わかりなんだから…!)