第97章 【番外編】花火大会
「すみません…あの……まず理由を話してくれませんか…?」
やっと何がなんでも拒絶するといった姿勢を崩した桜に、杏寿郎は表情を和らげた。
杏「いや、俺も理由を話さずすまなかった。……君を良くない目で見ている男が居る。あまりこういった事を言いたくないが、人相が悪い。」
「良くない、目……。」
杏「ああ。君の顔だけでなく体も舐めるように見ている。俺が側に寄っても尚だ。」
それを聞くと桜は体を強張らせ、すぐに杏寿郎の胸にしがみついた。
そして、『これで男がいなくなるのなら…』と言うように怯える顔を上げてキスをせがむ。
実を言うと男は少し前にデッキへと戻っていた。
杏「そう心配するな。見せつけるようにすれば諦めるだろう。」
桜はその言葉に必死で頷きながら杏寿郎のキスを受け入れ、自ら舌を入れた。
杏寿郎は口角を上げながら仲間を2人連れて再び降りてきた男に目を遣る。
一方、階段を降りる足音を聞いた桜は益々必死に舌を絡めた。
杏寿郎は敢えて受け身になると、桜が自身を狂おしい程に求める様子をたっぷりと見せつけたのであった。
―――
「杏寿郎さん…。」
杏「ああ、もう大丈夫だぞ。デッキに上がるか?」
杏寿郎の胸に顔を埋めていた桜は暫く黙った後、こくりと頷いた。
まだ花火の音は続いている。