第97章 【番外編】花火大会
杏(………………………………。)
杏「……一刻を争う事態だったとは言え、君を1人にしたのは下策だったな。」
「………………え?」
杏寿郎の言っている事が分からず、桜は首を傾げる。
すると杏寿郎は男を睨みながら桜に口付けようとした。
「やっ」
―――べちんっ
杏寿郎は桜に両手で拒まれると小さな声で『よもや。』と呟いた。
「お、お外では、」
杏「必要があるんだ。なかなかに悪質な視線だぞ。」
そう言いながら杏寿郎が屈むと桜は再び杏寿郎の顔に両手をべちんとぶつけた。
杏「…桜。」
桜は杏寿郎に低い声で呼ばれると少し怯んだが、それでも譲らなかった。
「杏寿郎さんは隣で自由にしてて良いって言いました。キスをしない自由もあるはずです!」
そう言うと桜は杏寿郎から少し距離を取る。
不仲に見えるやり取りを男に見せたくなかった杏寿郎は顔を顰めた。
その表情の迫力に杏寿郎が今どれ程切羽詰まっているのかを理解した桜は居心地悪そうに両手の指を絡ませた。