第97章 【番外編】花火大会
「そうです。ありがとうございます。でも…故障してしまったかもしれません。」
杏「そう決めつけるのは早いぞ。今電源を入れれば水を介してショートするだろうが、乾かしてしまえば案外救えるかもしれん。」
そう言われて電源を入れようとしていた桜は慌てて指をパッと離した。
杏寿郎は貰ったタオルで髪を拭くと自身の有様を改めて見下ろした。
杏「なかなかに酷い格好だな。」
「普通…飛び込まないです。ただでさえ視界が悪い川なのに加え、今は暗いですし…。」
桜は自身の為に飛び込んでくれた事もあり、あまり強く注意出来なかった。
杏寿郎はその様子を見ると微笑んだ。
杏「君の言う通りだ。洗面所を借りるので君も付いてきてくれ。」
「…はい。」
桜は杏寿郎の着るものを剥ぎ取ると杏寿郎をトイレに押し込み、水をなるべく無駄にしないように気を付けながら浴衣を簡単に洗った。
杏寿郎はその間に固く絞ったタオルで全身を拭うと桜から浴衣を受け取って着付け直し、仕上げのように蛇口の下に頭を突っ込んで水を被った。
杏「うむ!匂いは取れたな!!」
「皆さんが花火に夢中でよかったです…。」
桜は杏寿郎の頭に掛かっているタオルに手を添えるといつものように髪を乾かし始めた。
するとデッキから降りてきた男がそれを見て目を細める。