第97章 【番外編】花火大会
「では!この人でお願いします…!」
女「はい、畏まりました〜。仲が大変宜しいようで羨ましい限りですね。私は旦那を切ろうとだなんて考えたことすらありませんでした。」
そんな言葉に船に乗っていた客も笑い声を漏らす。
一方、桜は顔を真っ赤にさせながら杏寿郎の腕を放した。
杏「どうした。」
杏寿郎は一切笑い声を上げず、なんとか優しい微笑みを保ったまま桜の頭を撫でた。
すると涙を滲ませた桜が顔を上げる。
「猫って言えばよかったです…。」
杏「気にするな。俺は嬉しかったぞ。何もおかしな事はしていない。」
そんな会話をしている間に、切り絵師は杏寿郎の特徴的な髪型の男性を見事に表した作品を桜に手渡した。
「わ、わああ!すごい!本当に杏寿郎さんだ…!ありがとうございます!!」
桜は恥じていた事を忘れ、微笑ましそうにする切り絵師に独特な柔らかい笑みを浮かべたのだった。
その時、乗り合わせた男3人が桜を見てこそこそと話をしていた。
その会話の中には桜の結婚前の名、つまりミスコン時代の桜の名が含まれていた。
「杏寿郎さん!始まりましたよ!!」
杏「うむ、そうだな!だが身を乗り出しすぎだ!」
2人はデッキには行かず、船内から提灯越しに花火を見上げていた。