第97章 【番外編】花火大会
「………もしかして、」
杏「うむ。船の上なら混雑しない。あの様な人混みに居たら気が気でないのでな。」
桜は自身にお金を使い過ぎていると思って少し複雑そうな顔をしたが、船が間近に迫ってくると目を輝かせた。
「わ、わああっ」
杏「はは、良い反応だな!!」
「はい!わくわくです!!」
杏寿郎は興奮して握り拳を作る桜を微笑ましそうに見つめながら頭を撫でた。
屋形船は中で食事も出来、上に花火観覧の為のデッキもあるものだった。
杏「花火が上がる前までは食事が出たり催し物もあるようだぞ。」
「そうなんですか!」
桜は杏寿郎の手をぎゅっと握り直すと花咲く笑みを浮かべ、それを見た杏寿郎もにこりと微笑み返し、これからの時間に思いを馳せた。
――――――
女「ではお嬢さん、何か切って欲しいものはございますか?」
「え!えっと…、」
切り絵師のパフォーマンス中、声を掛けられた桜は酷く狼狽えた。
当然この様なシチュエーションは桜にとって初体験だ。
桜は迷ってパッと周りを見渡すと楽しそうに腕を組んでこちらを見ている杏寿郎の腕を両手で掴んだ。