第97章 【番外編】花火大会
杏「ご馳走様でした!!」
「ふふ、ご馳走さまでした。」
そんなこんなで最近は『お粗末さまでした』ではなく、『ご馳走さまでした』という事も増えた。
(幸せだな…。明日も花火大会だし…。)
そう思って視線を皿に落としながら微笑んでいると、杏寿郎も桜の気持ちを察して温かな気持ちになったのだった。
杏「夕方まではどうしようか。」
「そうですねえ…。」
ベッドで杏寿郎の腹の上にうつ伏せに寝かされた桜は『うーん。』と唸った。
杏寿郎はそんな桜の背に腕を回し、手でその背をぽんぽんと優しく叩いている。
杏「花火大会の前後は人の混み具合が異常だと思うので少し早めに行った方が良いかも知れないな。」
「日本最古の花火大会ですもんねえ…。」
杏「そうだな。大学時代、友人が随分と遠くでしか見れなかったと言っていた。人がびっしりだったと。」
「へええ…!」
桜はそう言いながら身を乗り出し、輝く瞳で杏寿郎の顔を覗き込んだ。
すると杏寿郎は桜の背から頬へ両手を移す。
そして大事そうに包みながらもふにふにと頬を揉んだ。
「むぅ。」
杏「明日は浴衣を着るのだろう?」
「はい。杏寿郎さんもですよね?」
杏「ああ。聞いていなかったが何色なんだ。」
「………黄色と迷ったのですが、落ち着いた赤色にしました。」
そう言うと杏寿郎は自身の瞳と髪の色に合わせようとしてくれていたのだと悟り、桜をぎゅっと抱き締めた。
『んむ"ぅ、』
杏「愛らしいなあ…君は。」
そう言うと杏寿郎は桜が窒息死する直前まで抱き締め続けたのであった。