第17章 覚悟と誠意、新しい関係
杏寿郎の考えを知り、これが一時の言葉でないと知った桜は動揺した。
(でも…私にも使命がある。それもまだ慣れるどころか経験もしてない。恋愛なんて出来る余裕があるか分からない…。それに、今まで交際なんて考えた事もなかった。)
(だから、心の準備が出来てない。覚悟が足らない、杏寿郎さんと向き合う余裕を作れる自信もない。)
(だから……杏寿郎さんの真剣な心に誠意のある返事をするのなら………、)
―――大事に思うからこそ、断るべきだ。
(これが一度きりのチャンスかもしれないけど…でも……、)
桜は眉を寄せて ぎゅっと拳を握った。
「……ありがとう、ございます…。杏寿郎さんの気持ちはちゃんと伝わりました。」
桜は杏寿郎の目を一生懸命見つめながら声に力を込める。
「お気持ちは本当に嬉しいです。杏寿郎さんは私にとって怖く感じない特別な人です。…ですが、お受け出来ません。」
杏寿郎は真剣な目のまま表情を変えなかった。
「私は……、杏寿郎さんの気持ちに応えられる程の覚悟がありません。」
桜は自分が杏寿郎に惹かれている事は伝えなかった。
(自分が振られ、傷付く可能性がある交際なら流されて受けたかもしれない。)
(でも、杏寿郎さんは本気だった。対して私はどうだろう。確かに惹かれているけど…覚悟の釣り合いが取れている自信がない…。任務で余裕がなくなったら杏寿郎さんを蔑ろにしてしまうかもしれない…。 )