第16章 目覚めた女と諦めない男
桜は杏寿郎の強引な行動の意図を知り、納得しそうになったが慌てて頭をふるふると振った。
「杏寿郎さんが真面目でひたむきな事は本当に分かってるんです。ただ、それが鬼狩りに向いているのも見ました。」
「なので、その信念の強さを信用すればするほど、杏寿郎さんの今の言葉に混乱するんです。」
それを聞くと杏寿郎は初めて腑に落ちた顔をした。
そしてすぐに破顔する。
杏「君は俺が子を成さず、煉獄家の務めを途絶えさせると思ったのか?確かに今までは色恋を避けてきたが、生涯一人で生きる気はないぞ。」
杏寿郎はそう言うと呆けた顔の桜を愛おしそうに見つめてから優しく抱き締めた。
杏「先ほども言ったが、愛してしまった女性を諦める努力はした事がない。…したくもない。だが、愛し合う事は俺一人で出来る事ではない。」
杏寿郎はまた体を離して桜と目を合わせる。
桜は見た事のない熱を帯びた杏寿郎の目を見て、小さく肩を揺らした。
杏「君次第なんだ。君が、俺の命がいつ消えるか分からない事を覚悟してくれれば…君がそれでも俺を選んでくれるのなら、俺から君を手放すつもりはない。」
杏寿郎が思ったより現実的に考えている事を知り、桜は頭が真っ白になった。