第96章 夢が叶う時
そんな溜息が聞こえてきたような気がした桜は途切れそうになる意識の中で出会った頃……布団の中で初めて出会った頃に杏寿郎に抱いた感情を思い出していた。
(杏寿郎さんは……相変わらず押しが強すぎる…。)
そんな事を考えている桜を横抱きにしている杏寿郎は全く反省しておらず、口角を上げながら『翻弄されて愛らしい反応をする桜に満足した』とでもいうような表情を浮かべている。
杏「桜、君はいくつになっても愛らしいなあ。」
「……杏寿郎さん、たちが悪いですよ。」
杏「よもや!!起きていたのか!!!」
悪びれず笑う杏寿郎に桜は怒る気も失せ、それどころかつられて笑ってしまった。
杏「悪気はないんだ。ただ君が愛おしくてな。」
「………それがたち悪いっていうんです。分かってて言ってますよね…?」
杏「いや、よく分からないな。」
杏寿郎は親族の控室に入ると桜を座らせる。
「うそです。白状して下さい。」
杏「嘘などつく筈がないだろう。では、」
そう言うと杏寿郎の瞳がすぅっと意地の悪い色を帯びた。
杏寿郎の綺麗な目に弱い桜はそれが良くない表情であると分かりつつ目が離せなくなる。