第96章 夢が叶う時
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そして時は流れ、彩火と天満の結婚式当日。
「杏寿郎さん…、お願いです。しゃんとして下さい。」
杏「だが…、」
桜はめでたい日に眉尻を下げっぱなしの杏寿郎に呆れたような息をつくと少しだけ頬を緩めた。
(まるで私達の式の時のお父さんみたい。…泣いてはないけど。)
「ほらほらケーキ入刀ですよ。2人仲良くて可愛らしいですね。」
杏「あれは1人でも切れるのではないのか。」
「私達も2人で切ったじゃないですか。こんな日にそんな子供みたいな態度取ってると1ヶ月お芋抜きですよ。」
杏「…………………。」
「そんな目で見ないで下さい。」
彩『お母さん、お父さん、主役を差し置いていちゃつかないでください。』
「あ、ぅ…、」
杏寿郎の縋るようなずるい目に頬を染めていた時、いつの間にかマイクを司会から奪った彩火が注意をする。
すると2人の仲の良さを熟知していた客達は笑い声を上げた。
「…………杏寿郎さんのせいですよ。2ヶ月抜きです。」
杏「よもや!!それはあんまりだろう!!君が勝手に俺の顔を見て頬を染めたのが悪いと思うのだが!!!」
「しーっ」
杏寿郎の悲痛な色を滲ませた大きな声で再び注目を集めてしまった桜は真っ赤になりながら抑えるように杏寿郎の手を握る。
するとそれを仲直りの印だと勘違いした杏寿郎は気を良くしながら指を絡めて握り直し、桜は振り回されっぱなしで泣きたくなってしまった。