第96章 夢が叶う時
それからも良いものを着ている為に懐事情が筒抜けであった2人は詐欺グループによく狙われてしまった。
そして桜が触れられそうになる度に杏寿郎が過剰反応をする為、桜は苦笑する。
「杏寿郎さん。嬉しいですが私はもうそんな歳じゃないのでそこまで…しなく、ても、」
そう言いながら杏寿郎を見上げた桜は杏寿郎があまりにも真剣で余裕のない顔をしていた為に最後まで言葉を紡ぐことが出来なかった。
そして口をきゅっと結ぶと自身の手に視線を落とし、まるで若い娘に戻ったかのような感覚を味わったのだった。
しかし、杏寿郎ばかりが桜を大事にしていた訳ではない。
桜もまた杏寿郎を深く深く愛していた。
桜の杏寿郎への愛情はいつまでも底が見えない程に深く、杏寿郎はいつまでも桜に酷く恋をしているような扱いをした。
そして、そんな風にいつも一緒に仲良く過ごしていると とうとう待ちに待った64回目の5月10日がやってくる。