第96章 夢が叶う時
「定年退職が見えてきましたね。」
杏「まだまだ先だろう。」
「そうでしょうか。きっとあっという間ですよ。」
杏「そうか。…退職をしたら何をしようか。」
朝ご飯を用意した桜が杏寿郎を起こしに来ると 2人は最近増えたそんな話をしながらリビングへ向かう。
杏「む。厚寿郎、俺を待たずに食べて良いと言ったろう。」
厚「俺が一緒に食べたいだけです。おはようございます。」
杏「うむ、おはよう。桃寿郎は…、まだ道場か。」
「問題は何時に起きてるかですね。ちゃんと寝てるのかな…。私見てきます。」
杏「俺も行こう。厚寿郎、急いで戻ってくるのでもう少し辛抱してくれ。」
厚「はい。」
厚寿郎は無理に『先に食べろ』と言わない父の後ろ姿を微笑みながら見送った。
杏寿郎は厚寿郎に宣言した通り桃寿郎の竹刀を取り上げるとすぐに戻ってきて朝食を3人で食べた。
相変わらず穏やかな厚寿郎は大学生になっており、この日は午後からの講義であったのにも関わらずきちんと朝早く起きている。
一方、末っ子の桃寿郎は駒校高等部の1年になったばかりで鍛錬に明け暮れていた。