第96章 夢が叶う時
「あっ!!うそ…!杏寿郎さん…っ!!」
蹴った床は足の形を残すように割れ、刀身が当たらずとも技が及んでしまった壁と天井からは青空が覗いている。
杏「…………よもや。最後に上へ振り抜いた際だろうか。随分と上の方に穴を空けてしまったな。」
「塞がないと雨が降ってきたら板が濡れてしまいます…。」
そんな深刻そうな顔をする大人2人の会話は三つ子達に聞こえていなかった。
慶「すごい…!!」
彩「本当に炎の虎が見えた!」
悠「剣もそうだが気迫もすごかった!!!」
彩「お母さんの言った通り龍も見えた!」
そんな風に興奮気味に話す兄や姉を解放された桃寿郎は首を傾げて見つめている。
桃「なにやらすごいおとがしましたがあのカベとテンジョウのあなは父上があけられたのでしょうか!!」
慶「そうだ!すごいだろう!!」
悠「剣の切っ先も届いていないのにだぞ!!」
桃「それはすごいです!!!ですが、」
桃寿郎はそこで言葉を切ると更に首を傾げた。
桃「道場をこわすのはわるいことなのではないのですか!!木のくずがちらばってはだしであるけそうにありません!俺はまだたんれんをしたいのにこれではこまります!!!」
慶「…………それは…、」
悠「……………そうだが……。」
杏「桃寿郎の言う通りだ!!すまない!!急いで片付けるので許してくれ!!!」
「みんな……ううん、彩火以外のみんなも手伝ってくれるかな。」
「「「はい!!!」」」
杏「桜、君も転びかねないので彩火と道場の隅で待機していてくれ!」
「え……、」
そうして厚寿郎が璃火の手を引いて道場に顔を出した頃 漸く道場は使えるようになり、厚寿郎と璃火は穴に驚いて口を開けたまま暫く固まってしまったのだった。