第96章 夢が叶う時
杏「教えてくれ!もう父親に嫌悪感を持つようになったのだろうか!!」
「ふふ、ちがいますよー。では璃火に『教えてもいいよ』って言われた事だけ教えますね。…璃火はお父さんに恋をしているようです。」
杏「…………こい?」
「男性の好みまで遺伝してしまったようで…。」
そう言う桜はくすくすと笑っている。
その視線の先で杏寿郎は嬉しそうなはがゆそうな妙な表情を浮かべていた。
杏「それでこの前も着替えの時に俺が部屋に入ったらぬいぐるみを投げつけてきたのか。てっきり思春期に入ったのかと…。だが、このままでは距離が出来てしまう事には変わりないな。」
「思春期は早すぎます。距離についてはそんなに心配しなくても…、」
そこで言葉を切ると桜は楽しそうな表情を作る。
「同年代に好きな子でも出来ればお父さんへの恋心も忘れて仲良くなれますよ。」
杏「…君、わざと言っているだろう。意地が悪いぞ。」
「ふふ。可愛らしくて、つい。」
桜はそう言って笑っていたが溜息をついていた杏寿郎は はたとある事に思い当たると桜の肩を掴み直した。
杏「君の初恋は遅いだろう。大人になる前に異性にそういった興味は芽生えるものなのか。もしそうでないのなら俺は妙な距離感をずっと保ち続けられるのだろうか。」
「…それは…そうですね……どうでしょう…。」
実際のところ、杏寿郎と出会うまで男にときめいた事が無かった桜は そんな自分でさえときめかざるを得なかった男を父親にさせてしまって璃火に少し申し訳ない気持ちになった。