第96章 夢が叶う時
杏「では着いたらまた連絡します!!」
槇「あっ」
車が走り出すと桜はチラッと後ろを振り返りながら杏寿郎に向かって小さな声を出した。
「お義父さま、少し私の父に似てしまった気がします。」
杏「そうだな、俺も気持ちがよく分かるようになった。君と接する際に分かるようになった点もあるが今は…、」
原因の人物が同じ車内に居た為 杏寿郎は言葉を切る。
しかし桜は分かりきった答えであった為 眉尻を下げながら頷いた。
「私でさえ危ういなあって思います。」
2人が名を伏せている人物は勿論璃火だ。
育てば育つほど桜に似てしまい、それは彩火よりよっぽど酷い。
何より深刻なのはドジさではなく、その雰囲気だった。
杏「彩火は自覚があるのだがな…。」
そう小さな声で呟くと杏寿郎はこれから起こり得そうな事を想像してハンドルを握りしめる。
「で、ですが、私もこうして幸せになっていますし…。」
杏「…………………………。」
現在に至るまでの過程を全て知っている杏寿郎は返事をしない。
そしてその過程に自身が耐えられるのかどうか自信が持てず、勇之に対して同情と共に尊敬の念も抱いたのであった。