第96章 夢が叶う時
「ありがとうございます。お父さんは偉大だなあ。わ、歯型がこんなに…桃寿郎はすごいねえ。」
杏「褒めることではないぞ。その色からして暫くは跡が残るのではないか。桃寿郎、桜は食べ物ではないのだぞ。」
そう言いながらも杏寿郎は優しく桃寿郎の頭を撫でる。
桃「あぐ。」
すると今度は杏寿郎の手を噛んだ。
杏「む、見境無しか。凄い食い意地だな。俺も腹が減ると父上の手をよく囓っていたと聞いた事がある。俺に似ているのなら母上に相談した方が良いかもしれないぞ。」
「ふふ、分かりました。」
桜は提案してくれる言葉にそう返事をしながらも 先程自身が噛まれていた時のように杏寿郎が桃寿郎を強く叱らない事に笑みを漏らす。
その視線の先で杏寿郎は桃寿郎の鼻を摘んで口を開けさせようとしていた。
杏「こら、父も夕飯を食べたいんだ。離してくれ。」
桃「む"ぅっ」
杏「……凄いな、全く離れないぞ。もう少し食べさせては駄目なのか。」
「今は一般的な食べるべき量を守っています。太ってしまわないかと心配で…。」
杏「ふむ。」
杏寿郎は空いた片手を顎にやると自身の手を未だに強く噛んでいる桃寿郎を見つめる。