第95章 続々と
(6人目…とうとう末っ子の登場か……。)
「桃寿郎は元気だからすぐ舞えるようになっちゃうかもねえ。」
桜の言った "舞" とは、産屋敷家が管理している神社へ年に1度奉納しているもののことだ。
この舞のルーツは全集中の呼吸の型であり、炎の呼吸の舞もこの時代まで受け継がれている。
呼吸の型を元にしていると言ってもやはり舞はあくまでも舞であり、舞えるようになれば身体能力は確かに上がるものの 鬼殺隊士程の力が得られる訳ではない。
実際、杏寿郎も桜に拒絶されてから気持ちを落ち着かせる為に鍛錬を始める前までは普通の "運動神経がとても良い人" であった。
そんな舞を小学生になった慶寿郎と悠寿郎は杏寿郎から定期的に教えてもらっている。
今もその真っ最中であり、着込んだ桜は桃寿郎に話し掛けながら彩火と璃火と共に縁側でその様子を見ていた。
彩「きれい…。」
「本当の型も綺麗で、それからとっても格好いいんだよ。今度お父さんに見せてもらおうか。」
彩「うん。」
「お父さんが剣を振ると炎の虎がみえるんだよー。」
彩「とら……?」
彩火はそう言いながら目を輝かせる。
そして先程まで興味を持っていた舞には目もくれず桜に向かって身を乗り出した。
桜はその様子に微笑みながら頷き 彩火の綺麗な色の髪をさらさらと梳く。