第95章 続々と
2人が厚寿郎を気に掛けた理由は2つある。
1つは槇寿郎が道場での一般指導を引退してから孫達への指導に妙な熱を持ってしまっているからだ。
そしてもう1つは体格に恵まれ、才能があるにも関わらず厚寿郎が剣道を好きになれずにいるからだった。
杏(厚寿郎がまともに踏み込んだところを見た事が無い。桜とピアノを弾いている時の方がよっぽど活き活きとしている。)
同じ頃、桜も似たような事を考えていた。
(きっと厚寿郎はスポーツだろうと人の事を叩くことができない。戦うスポーツは向いてないんだ。もしピアノだけじゃなく体を動かしたいって言ってきたら天満くんが習ってる体操みたいに1人で出来る運動を勧めてみようかな。)
そんな事を考えている2人の懸念通り、槇寿郎は見込みのある厚寿郎を教える事に夢中になっていた。
杏寿郎はそろそろ昼であることを伝えて止めさせ、頑張った厚寿郎を褒めながら頭を撫でると汗も気にせず肩車をする。
厚「わあ!父上たかいです!!」
しっかり者の厚寿郎も大好きな肩車をされればはしゃいだ声を出し、歳相応の笑顔を浮かべた。
杏「そうだな。だが厚寿郎の方が俺よりも大きくなると思うぞ。」
厚「そうなのですか?」
杏「うむ。俺が厚寿郎くらいの時 厚寿郎程背が高くなかったのでな。」
そう伝えると厚寿郎はまた嬉しそうな声を出し、杏寿郎もその後ろを歩く槇寿郎も頬を緩めたのであった。