第95章 続々と
「やっぱり桃寿郎は元気な子に育つのではないでしょうか。それにしても6人兄弟の末っ子となると皆可愛がるでしょうね。」
杏「そうだな。俺としては璃火がどんな姉になるのかが楽しみだ。」
そう言いながら杏寿郎は璃火が眠るベビーベッドに視線を遣る。
そして桜に視線を戻すと少し意地の悪い笑みを浮かべた。
「…わ、わたしみたいにしっかりとしたお姉さんになりますよ。」
桜は事ある毎に璃火に似ていると言われていた為、杏寿郎のからかうような言葉に赤くなりながら眉を寄せる。
すると杏寿郎は益々楽しそうな顔になった。
杏「ああ、君も姉だったな。しっかりとした姉だったのか。だが可怪しいぞ。何故しっかりしようと思えばしっかり出来る君はあれ程俺を困らせたんだ。あれは演技だったのか。」
「…………それは、その…、」
『しっかりしている、あれ等は演技だ』とも『困らせてない』とも言えず、桜はみるみる元気を失くして消え入りそうな声を出す。
すると杏寿郎は堪えきれずに小さく笑い声を漏らした。
それを聞いた桜の頬がぶわっと赤くなる。
「杏じゅ、」
杏「すまない!!君がしっかりとした姉であったかどうかは分からないが 良い姉であった事は確かだ。みのる君が良い子に育ったのだからな。そうであれば璃火についても問題はあるまい。しっかりしていなくとも優しく愛情深い姉であれば桃寿郎も幸せだろう。」
「…………そう、ですね…。」
杏寿郎の穏やかな声色と謝るように頭を撫でる優しい手付きに桜は段々と恥を溶かしていき、ふわふわとした心地になると杏寿郎にもたれ掛かった。