第95章 続々と
運動神経が良い慶寿郎と悠寿郎は歳相応の満面の笑みを浮かべながらも歳不相応な泳ぎを練習しだしたが、隠れドジの彩火は最初こそかなり慎重に行動したものの 珍しく楽しい気持ちを制御できなくなると体のコントロールが疎かになり、滑り台は見事全て腹で滑って顔面から水に突っ込んでいた。
「彩火には必ず大人1人付き添いましょう。はしゃぐと何が起こるか…。」
杏「では俺が付き添おう。君が監督役だと2人で迷子になってしまいそうだ。」
「そんな事……、」
少し自信を持てなかった桜は言い淀んだ後『やっぱりお願いします。』と小さな声を出した。
そんな桜の頭を杏寿郎は微笑みながら撫でる。
杏「その代わり慶寿郎と悠寿郎にしっかりと見てもらうと良い。」
「………………え?」
桜は自身が監督役扱いされていない事を悟ると不服そうな顔をして杏寿郎の頬を優しく抓った。
「さすがに私の方がしっかりしていますよ。漢字も読めますし。迷子になった時文字を読めるかどうかは大事ですよ。迷子センターまで自力で行けますからね。」
杏「君は迷子になる事を前提に考えているのか。やはり心配だな。」
「そ、そういう訳じゃ…、」
そうして杏寿郎は桜をからかいながら来年の夏に思いを馳せる。
杏(0歳の桃寿郎を置いてプールに行っていいのだろうか。再来年は……、家族全員で遊びに行ける日はなかなか遠そうだな。)
そんな事を考えていると除け者にされようとしている事を感じたのか桃寿郎が一際力強く桜の腹を蹴った。