第95章 続々と
(胎動は性格と関係ないって聞いたことがあるけど おっとりしてる子な気がするな……。)
杏「どうかしたのか。」
「あ、杏寿郎さん。……慶寿郎、悠寿郎、彩火。お父さんに遊んでもらってるの?」
慶&悠「「はい!!!」」
彩「うん。」
見れば彩火は肩車をして貰い、慶寿郎と悠寿郎は彩火を支えている杏寿郎の腕にぶら下がっている。
彩火が杏寿郎の特徴的な前髪をハンドルの様に握っているのを見て桜は思わず笑みを漏らした。
杏寿郎がそんな桜の側に座ろうとすると慶寿郎と悠寿郎はパッと離れ、蚊帳の外にされたくない彩火は肩の上に留まる。
桜は遠慮させるような話題ではなかった為 慶寿郎と悠寿郎に手招きをした。
すると2人は杏寿郎の両脇にちょこんと正座をする。
それを見届けると桜は視線を腹に落としてそこを撫でた。
「璃火はおっとりしてるのかなあと思っていただけですよ。あんまり蹴らないですし、蹴っても勢いがないんです。」
杏寿郎はそれを聞くと体の力を抜き、微笑みながら腹を撫でる。
杏「璃火、聞こえるか。もっと動いても良いのだぞ。」
慶「母上、さわっていいですか!!」
悠「俺もさわりたいです!!」
「 "お母さん" ね。もちろん良いよ、おいで。」
桜は2人を手招きすると腹を触らせ、『璃火、璃火!!』と一生懸命呼びかける様を微笑みながら見つめた。
そしてそれを見てそわそわとしている彩火にも手招きをする。
「彩火お姉ちゃんも声を掛けてあげて。」
彩「………………。」
彩火は黙って頷くとすぐに杏寿郎の肩から下ろしてもらい、桜の側に早歩きで近寄った。
彩「璃火、早く出ておいで。」
彩火は皆が聞いたことの無い姉らしい柔らかな声で呼び掛ける。
それに杏寿郎と桜はこっそりと目を合わせて微笑み合ったのだった。