第16章 目覚めた女と諦めない男
少し鋭くなった視線にギクッと肩を震わせると桜は顔をあからさまに背けた。
(まずい…杏寿郎さんはとんでもなく真っ直ぐだから、真っ直ぐな意見でぶつかるべきだった…………けど、断る理由が見つからなかったから仕方ないような気も……。)
たらたらと冷や汗をかきながら、顔を背け続ける。
だが、痛いほどに視線を感じる。
あの炎色の目が、眼力の強すぎる大きな目が、自分をじぃーー…っと焼くように見つめているのを感じる。
(やだもうこわいこわいこわい!!)
「杏寿郎さん!しん…お父様の好きなおつまみをお教えしましょう!…だから許して…。」
杏「それは後で有難く教えて頂こう。それよりも何故こちらを向かない。」
(この静かなトーン怖い…それに…さっきも思った通りごまかせる人じゃない……。)
そう思うと観念したように桜は俯きつつも杏寿郎に向き直った。