第16章 目覚めた女と諦めない男
他者として意識してくれる事に安心しつつも、杏寿郎の無駄のない思考回路に感服する。
(すごい。こういう切り替えの速さって前線にいる時に絶対必要だよね…見習わないと…。)
思わず桜は師匠を見る目になる。
(何はともあれ、これで杏寿郎さんも他の人に知られたくない事を無闇矢鱈に言わなくなるだろう……。)
そう思い、桜は気を抜くように息をついた。
しかし―――、
杏「うむ!勘違いは解消されたな!では俺を受け入れてくれるという事で良いだろうか!」
「……っ!なんで!そうなるんですか!」
ほっとしたのも束の間、桜は杏寿郎の意志の強さに愕然とする。
反対に杏寿郎はその反応に首を傾げた。
杏「断った理由をそのように述べたのは君だろう。」
「う…、ぐうの音も出ません。でも、人か妖かも分からない生き物を恋人にするなんて…。」
「それに私にとっては夢じゃないから、あの流れを止めたかったんです!」
杏「妖ではないと自ら言っただろう!」
杏「…つまり、君は俺に告白を取り下げさせる為にその場凌ぎの返事をしたと。」
杏寿郎は少し眉を寄せて桜を見た。