第95章 続々と
「彩火、お母さんと同じ色を押してごらん。これとこれは彩火が好きなりんごの色でしょう 。一緒に押すよ、せーの、」
そうしてピアノに貼った7色のシールを指差しながら桜はチューリップの冒頭、『ド、レ、ミ』だけを彩火に繰り返し弾かせることに成功したのだった。
それから彩火は何かに取り憑かれたように『ド、レ、ミ』を止めなくなり、慶寿郎と悠寿郎も際限なく杏寿郎と打ち合いをし続けた為 桜が4人を止めなくてはならなかった。
「杏寿郎さんは限度を知らないです。」
杏「俺の子供だ。体力は余っていたしやる気もあった。無理はさせていないぞ。」
「もう。」
桜はそう言って頬を膨らませながら時計を指差す。
時計はその日 日曜の昼過ぎ、つまり食事をしなければならない時間を示していた。
しかし杏寿郎は時計を見ずに桜の膨れた頬に手を伸ばして優しく触れる。
杏「愛らしいなあ。君はいくつになったら落ち着いてくれるんだ。」
「落ち着いていると思います!」
桜がそう言って赤くなると、杏寿郎を見て頬を膨らませていた彩火の頬に悠寿郎がペチッと手を当てて『あいらしいな!!』と言った。
「ああ!それは真似をしちゃだめ!女の子を振り回す子になっちゃう…!」
慶寿郎も真似を始めたが杏寿郎はその様子を笑って止めようとしない。
しかし彩火が目を細めて2人の手をはたき落とした為その流れは終わり、同時に彩火が随分と隙の無い子である事が証明されたのであった。