第95章 続々と
杏「いつ産まれるか分からない体なんだぞ。」
杏寿郎は桜の代わりに彩火を抱き、彩火は嫌っている訳ではない杏寿郎の腕の中で大人しくなる。
『面白くない。』と思う時があるだけで杏寿郎の事自体は好いているのだ。
「そうですね、ありが……、」
桜が途中で言葉を切って腹を押さえ 顔を顰めると、陣痛だとすぐに察した杏寿郎は目を見開いて車の鍵を掴んだ。
お産は夜遅くまで続き、杏寿郎はやはりその間ずっと桜の側で見守り続けた。
そしてやっと産まれた厚寿郎は少し体が大きめではあるものの慶寿郎や悠寿郎と比べて動きが緩やかな子であった。
杏「君は本当に凄い。よく頑張ったな。心から尊敬する。」
杏寿郎は何度も言葉を変えて桜を労い、褒める。
駆けつけていた杏寿郎と桜の両親も産まれたと聞いて深く息を吐き、同時に嬉しそうに笑いながら涙を溢した。
そうして厚寿郎が産まれた10月からはより一層煉獄家は賑やかになり、桜も忙しくなったのだった。
厚寿郎は慶寿郎達程キリッとしておらず、杏寿郎に少し千寿郎を混ぜたような子であった。
桜は『名に合っている』と言って喜び、他の子達と同様に可愛がった。