第95章 続々と
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そうして穏やかに過ごし、桜が臨月を迎えるとイヤイヤ期を迎えずに2歳近くになった3人は随分と口達者になり 慶寿郎と悠寿郎はすっかり走れるようになっていた。
言葉を喋れるようになった事で気が付いた事は、慶寿郎と悠寿郎がただ元気なだけでなく 礼儀正しい子に育っている事と、やはり彩火は口数が少ないという事だった。
その代わり、前よりも更に瞳で訴えることが増え 冷たい視線に関してはバリエーションも豊かであった。
そしてそれは主に杏寿郎に向けられる。
杏「どうしてだろうか。桜を取られるのが嫌なのだろうか。」
寂しそうな声を聞くと桜は慌てて子供にするように杏寿郎の頭を撫でた。
すると杏寿郎の予想通り彩火は面白くなさそうな顔をする。
杏「今のは彩火の母上がした事だぞ。」
杏寿郎は子供達が随分と話せるようになってから再び親の呼び方を修正していた。
彩「ははうえ、 "あや" の。」
杏「それは違う。桜は俺の女性だ。」
「2人とも私の大事な子供と旦那さんです。」
杏「同列なのか。」
「子どもと張り合ってはだめです。とても比べられませんもん。」
杏「待ってくれ、子供が大事なのは分かる。俺もそうだ。とても大事に、心から大事に思っている。だが俺の方がずっと長い付き合いだろう。」
「そうですねえ。」
桜は流すように言いながら機嫌の悪くなった彩火を抱き上げようとする。
それを杏寿郎が慌てて止めた。