第95章 続々と
「杏寿郎さんの積み重ねた想いの厚さを大事にしたいと思ったんです。きっと愛情深く優しい子に育ちます。」
杏「……そうか。」
杏寿郎はそう言うと柔らかい笑みを浮かべながら桜の腹に手を伸ばし、『厚寿郎、俺が父親だ。 "父上" だぞ。』と繰り返す。
上の子3人にまだ『父上』と呼ばれない事が寂しいのだと察した桜はそれを聞いてくすくすと笑った。
『父上』どころか慶寿郎と悠寿郎は時々 杏寿郎を指差して "車" という意味である『ぶーぶー。』を連発する。
最初に言われた時は杏寿郎も酷くショックを受けた顔をしていたが、それが "車" ではなく ぶーぶーと呼んでいる "運ぶ遊び" をしてくれる人という意味なのだろうと察すると持ち直した。
杏「慶寿郎、悠寿郎、良い子にしていたか。彩火も元気か。」
桜の背を優しく撫でて立ち上がると杏寿郎は3人の元に寄る。
慶「ぶーぶー。」
悠「ぶー。」
杏「違うぞ。ぶーぶーをする "父上" だ。」
頑なに父上に拘る杏寿郎を見て桜は微笑み、彩火はじぃっと大きな目で3人のやり取りを見ていた。
「パパだよ。ぱーぱ。」
杏「むぅ。潮時だろうか。」
自身の指を掴む慶寿郎を見て杏寿郎は残念そうに呟く。
悠「ぱっぱっぱっ、」
悠寿郎が遊ぶように口を動かすと杏寿郎が目を見開き、『パパだぞ!!!』と呆気無く食い付いた為 桜はまた笑ってしまった。