第95章 続々と
杏「只今帰りました!!桜!!帰ったぞ!!!」
「お帰りなさい。」
桜は煉獄家全員に命令された通り、立ち上がって杏寿郎を出迎えない。
その代わり、杏寿郎はいつものように真っ先に桜の元まで駆け寄ってきた。
杏「うむ!今日も無事だな!!」
「はい、ずっと無事ですよ。」
杏「そうか!!それは良かった!!!」
そう言って桜を撫でようとした手がピタッと空中で留まる。
杏「手洗いうがいをしてくる!!」
「はーい。」
桜は毎日毎日そうして『手洗いうがいが先ですよ。』と瑠火に叱られる杏寿郎をくすくすと笑って見送った。
そんな桜は30歳、誕生日を迎えたばかりの杏寿郎は37歳だ。
桜は結婚してから7年経っても新婚のような反応をする杏寿郎を日々愛おしく思っている。
(杏寿郎さんみたいに育ってほしいな。名前はどうしようか…。)
妊娠から5ヶ月半、性別が解っても桜はまだ時間があるという気持ちから名前を全く決められずにいた。
杏「どうした?」
紙に漢字を書き出していると手洗いうがいを済ませた杏寿郎が隣に腰を下ろす。
桜は微笑みながらそれを見つめた。
そんな桜の逆隣に千寿郎はもう居ない。
春から社会人となった為 引っ越しをしてひとり暮らしを始めていたのだ。