第94章 成長
槇「煉獄家の色で癖のない髪の毛は初めて見たな。」
槇寿郎は彩火が成長する中で何度もそう言って髪の毛を撫でた。
そして不器用な手が娘に優しく触れる度に桜は微笑ましそうに見つめた。
「本当に綺麗な色です。」
そう言って桜もさらさらな髪の毛を撫でる。
すると彩火はピッと反応して『まーま。』と呼んだ。
「はーい。」
指を掴まれ何度も呼ばれる度に桜は嬉しそうに返事をする。
残念な事に成長が早かった慶寿郎と悠寿郎でさえ杏寿郎を未だ『ぱぱ』と呼んでいない。
杏寿郎は根気強く『父上だぞ。』と教えたが桜が近付いた時だけ『まま。』と反応した。
杏「早くも嫌われてしまったのだろうか。」
「まさか。父上が言いにくいだけですよ。パパにすれば良いのに。」
桜はそう言ってくすくすと笑い、背伸びをして杏寿郎の頭を撫でる。
すると杏寿郎は桜の腹を撫でて『俺が父上だぞ。すぐに覚えるんだ。』と教え込むように何度も伝え始めた。
「まだ居るか分からないんですよ。」
杏「いや、居る。」
これは後での話になるが 杏寿郎がそう断言した誕生日前日から1ヶ月後、本当にその時 腹に新たな命が宿っていたことが判明した。