第94章 成長
瑠「杏寿郎こそ『桜さんの反応を見て楽しむ癖を直しなさい。』と何度注意してもそうやって何度もしてしまうでしょう。」
杏「ですが俺のはわざとです。」
瑠「尚悪いです。」
瑠火はぴしゃりと言うと桜の方を向いて優しく微笑む。
瑠「子供は何度も失敗するものです。決して桜さんがよく転ぶところが遺伝したのだとは言い切れませんよ。」
優しくフォローされたものの『よく転ぶ』と言われた桜は赤いまま少し小さめな声で礼を言った。
そして再び冬になり 後少しで3人が1歳になるという頃、桜の立場はいよいよ弱くなる。
慶寿郎と悠寿郎が既に1人で歩けるようになったにも関わらず、彩火はつたい歩きでさえよく転ぶのだ。
杏「まただ。愛らしいなあ、また君のように自身の足に躓いた。慶寿郎も悠寿郎も伝い歩きでは滅多に転ばなかったぞ。」
「…………………………。」
桜が僅かに涙を滲ませて彩火に『ごめんね…。』と呟くと槇寿郎は杏寿郎の頭を思い切り叩いた。
杏「桜、すまない。罪悪感を持たせたかった訳では無い。転んでも俺が必ず支えるので怪我はしないように、」
「違うんです。ただ、これからこの子も杏寿郎さんにからかわれるのだと知って申し訳なくなったんです。」
杏「……………………。」
桜の心の内を知ると杏寿郎は口を開けたまま言葉を詰まらせ、膝立ちになっていた槇寿郎は座り直す。
そこへ瑠火がお茶を持って来た。